遺産分割協議書について
遺産分割協議書の作成
遺産の調査および法定相続人の確定ができましたら、遺産分割協議書を作成します。
相続開始により法定相続人の共有となった遺産を、個々の財産に分けるため協議を行い分割協議がまとまれば、相続人全員の物であった遺産が相続人ひとりひとりの個人所有物になります。この協議内容を書面にしたものを遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書とは、この協議の内容を記載した文書です。
遺産分割協議書によって、対外的には誰が何を相続したのかを主張でき、各相続人は遺産分割協議書に拘束され、撤回する事ができません。
遺産分割協議書を書き換える場合には、相続人全員の合意が必要となります。
ですが、財産の移転があれば、税法上は「新たな贈与」とみなされるため、税金がかかる事があります。
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点があります。
遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ効力がありません。
戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
全員の協議ですが、全員が承諾した事実があればそれでよく、全員が一堂に会して協議する事までは要求されません。
実際には、1通の遺産分割協議書(案)を作成し、他の相続人に、この内容でよければ実印を押してもらう方法がよく取られます。
法定相続人全員が署名・実印の押印をする事
厳密には署名ではなく記名でもかまいませんが、後々の紛争・トラブルを防ぐためにも署名するようにしてください。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続きができません。
財産の表示方法に注意
不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。
銀行等は、支店名・口座番号まで書いてください。
割り印が必要
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印(割り印)してください。
印鑑証明書の添付
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑証明書も添付してください。
以上が遺産分割協議書を書く上でのポイントとなります。
被相続人に対して特別な貢献をした相続人(寄与分制度)
生前、被相続人に対して長期の介護療養をしたり、面倒を見ていた相続人は、被相続人の死後、「相続財産は他の相続人よりも多めに相続したい」と考えるのはごく自然なことと言えるでしょう。
何十年も介護をしてきた相続人とまったく被相続人に対して関心がなく、援助等をしてこなかった相続人を比較すれば、当然前者の相続人が多少なりとも多めに相続するのが当然だと思われます。
しかし、いざ遺産分割協議になると、「それとこれとは別問題」といわんばかりに、遺産分割協議が難航し、最悪のケースでは親族同士で骨肉の争い、そして裁判沙汰になる場合もあるのです。
ここで何よりも大切になるのは、「譲り合いの精神」です。
お互い権利主張したいことはあるかと思いますが、あくまで譲り合いです。
そして、相続に関しては部外者が口出しすることがよくありますので、部外者は除いて、法定相続人同士で話し合いを進めるべきです。
生前亡くなった方に対し多くの貢献をしてきた方には、法律上、寄与分といわれる権利が認められています。
この寄与分について詳しく説明します。
寄与分が認められるための要件
- 生前、被相続人の事業に関し、労務の提供または財産上の給付をしたこと。
- 生前、被相続人への療養看護その他の方法によって、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をしたとき。
この2点のいずれかに当てはまる貢献者(相続人)は、寄与分を認められる可能性があります。
寄与分の権利を主張できる者
法定相続人にのみ認められます。
内縁の妻、事実上の養子、相続人の配偶者、家政婦などには寄与分は認められません。
寄与分を定める時の注意点
寄与分は、生前どの程度被相続人に対して貢献してきたか、貢献の時期その他一切の事情を考慮し、相続人同士で協議して決めることになっています。
寄与分の要件のところで説明しましたが、寄与分が認められるには、被相続人の財産の維持・増加につき特別の寄与があることが必要となります。
ここでいう「特別の寄与」とは、あくまで財産上の効果を伴う寄与のことを言います。
単に親族間の常識的な扶養の範囲に含まれる寄与は、特別な寄与とは言えません。
被相続人が事業をしてきたが、その事業にともに協力し、事業を成功させ財産が増加したとか、介護費用を何十年も被相続人の代わりに支払って、財産の維持を図った(減少を食い止めた)などが特別な寄与と言えるでしょう。
寄与分を定めるのに協議が整わない時
寄与分について、相続人間で話し合いをしたがお互いの権利主張ばかり先行して協議が整わないときは、家庭裁判所で寄与分を定める審判を申し立てることになります。
家庭裁判所では、遺産分割調停の中でこの寄与分についての紛争を解決するよう求めることが多いようです。
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